運動を続けるとなぜ持久力がつく?広島大学が「筋肉の仕組み」を解明
「運動を始めた頃より疲れにくくなった」
「前より長く歩けるようになった」
「階段を上っても息が切れにくくなった」
運動を続けていると、このような体力の変化を感じることがあります。
では、なぜ運動を続けることで持久力が高まっていくのでしょうか?
2026年9月15日、広島大学から、この疑問につながる興味深い研究成果が発表されました。
広島大学大学院医系科学研究科免疫学の研究グループは、筋肉の中で働く「CaMKIIγ/δ」という分子が、持久力トレーニングによる筋肉の適応に重要な役割を持つことを明らかにしました。
少し難しい研究内容ですが、ポイントはシンプルです。
運動を繰り返すことで、筋肉は単に動くのではなく、エネルギーを作り出して長く動き続けられるように適応していくと考えられます。
今回は、広島市中区でパーソナルトレーニングを行っている私が、広島大学の研究をもとに「運動を続けるとなぜ持久力がつくのか?」を分かりやすく解説します。
広島大学が「持久力が高まる仕組み」を研究
今回、広島大学の研究グループが注目したのが、
CaMKIIγ/δ(カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII)
という分子です。
名前だけを見るとかなり難しく感じますよね。
簡単に説明すると、筋肉が収縮すると筋肉の細胞内ではカルシウムの濃度が変化します。
CaMKIIγ/δは、その「カルシウムの信号」を受け取り、筋肉の細胞内へ情報を伝える役割を持つ分子です。
運動すると筋肉は何度も収縮します。
そのたびに筋肉の中ではさまざまな反応が起こり、繰り返し運動することで、体は少しずつ運動に適した状態へ変化していきます。
今回の研究では、CaMKIIγ/δが、この「運動への適応」を支える重要な存在であることが示されました。
4週間の運動で走れる時間が約25%向上
研究では、骨格筋だけでCaMKIIγ/δを欠損させたマウスと、正常なマウスを比較しました。
両方のマウスに、
・1日30分
・週5日
・4週間
のトレッドミル運動を行わせ、トレーニング前後の最大走行時間を測定しています。
その結果、正常なマウスでは、最大走行時間が平均約140分から約175分まで延びました。
およそ25%の向上です。
一方、CaMKIIγ/δを欠損させたマウスでは、トレーニング前後とも約140分で、走行能力はほとんど向上しませんでした。
この結果から、CaMKIIγ/δが持久力トレーニングによる体の適応に重要な役割を果たしていることが分かりました。
持久力のカギとなる「ミトコンドリア」とは?
今回の研究でもう一つ重要なのが、
ミトコンドリア
です。
ミトコンドリアは、私たちの細胞の中に存在し、酸素などを利用して活動に必要なエネルギーを作っています。
分かりやすく表現すると、
「細胞の中にあるエネルギー工場」
のような存在です。
私たちが歩いたり、走ったり、トレーニングしたりするためにはエネルギーが必要です。
持久力が求められる運動では、エネルギーを継続して作り出せることが重要になります。
今回の研究では、CaMKIIγ/δを欠損させた筋肉では、
ミトコンドリアの構造が乱れる、酸素消費量が低下する、エネルギー産生に関わる遺伝子の働きが低下するといった変化が確認されています。
つまりCaMKIIγ/δは、ミトコンドリアの構造や働きを保ち、運動を続けるために必要なエネルギー代謝の適応を支えている可能性があるということです。
運動を続けると「疲れにくくなる」のはなぜ?
運動を始めたばかりの頃、
「10分歩いただけで疲れる」
「少し階段を上るだけで息が切れる」
「筋トレをするとすぐに疲れてしまう」
という方もいると思います。
しかし、だからといって「自分には運動が向いていない」と考える必要はありません。
運動を継続すると、筋肉や心肺機能など、体のさまざまな部分が少しずつ運動に適応していきます。
今回の広島大学の研究からも、持久力トレーニングに対して、筋肉のエネルギー代謝そのものが適応していく仕組みの一端が明らかになりました。
トレーニングを始めたばかりの頃と、3ヶ月、半年、1年と運動を続けた後では、同じ運動をしていても感じる「きつさ」が変わることがあります。
これは体重や見た目だけでは分からない、大切な体の変化です。
ダイエットでも「運動を続けること」が大切
ダイエットというと、
「とにかくたくさん運動しないといけない」
「汗をたくさんかかないと痩せない」
「毎日ハードなトレーニングをしないと意味がない」
と思っている方もいるかもしれません。
しかし、大切なのは1日だけ無理をして運動することではなく、自分に合った運動を継続することです。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも、現在より少しでも多く体を動かすことが勧められています。
成人では、歩行またはそれと同等以上の身体活動を1日60分以上行うことや、筋力トレーニングを週2〜3日行うことなどが推奨されています。
ただし、これは「運動を始めた初日から絶対に60分歩かなければいけない」という意味ではありません。
普段ほとんど運動していない方なら、
まず10分歩いてみる。
エレベーターではなく階段を使ってみる。
家でスクワットを数回やってみる。
こうした小さな行動から始めることも大切です。
続けられる量から始めて、少しずつ運動量を増やしていきましょう。
筋トレとウォーキングを組み合わせるのもおすすめ
「持久力を高めたいならウォーキングだけでいいですか?」
という質問をいただくことがあります。
ウォーキングや自転車などの有酸素運動は、持久力づくりに役立ちます。
一方で、筋力トレーニングも健康づくりには重要です。
厚生労働省は成人に対して筋トレを週2〜3日行うことを推奨しており、有酸素性の身体活動と組み合わせることで、さらなる健康効果が期待できるとしています。
そのため、
ウォーキングなどの有酸素運動+筋力トレーニング
を無理のない範囲で組み合わせるのがおすすめです。
特に30代、40代になると、仕事や家事などで座っている時間が長くなり、運動不足になっている方も少なくありません。
体重を落とすことだけを目的にするのではなく、
「疲れにくい体を作る」
「長く歩ける体を作る」
「将来も元気に動ける体を作る」
という視点で運動を始めてみるのも良いのではないでしょうか。
運動初心者は「頑張りすぎない」ことも大切
運動を始めようと思ったときに多いのが、最初から頑張りすぎてしまうケースです。
「毎日1時間歩こう」
「週5回筋トレしよう」
「食事も一気に変えよう」
最初はやる気があるため続けられます。
しかし、疲労がたまり、だんだん運動すること自体が負担になってしまうことがあります。
ダイエットでも体力づくりでも、大切なのは短期間だけ頑張ることではありません。
半年後、1年後も続けられる運動習慣を作ることです。
現在ほとんど運動していない方なら、まずは週1〜2回からでも構いません。
体が慣れてきたら、ウォーキングの時間を増やしたり、筋トレの回数を増やしたりして、少しずつステップアップしていきましょう。
今回の研究結果を人間にそのまま当てはめることはできない
ここで大切な注意点があります。
今回の広島大学の研究は、マウスと培養細胞を用いた基礎研究です。
そのため、
「人間もCaMKIIγ/δによって必ず持久力が上がる」
と今回の研究だけで断定することはできません。
今後、人間の筋肉でも同じ仕組みが働いているのか、さらなる研究が必要です。
しかし今回の研究は、「運動を続けるとなぜ筋肉が長く動けるようになるのか」という仕組みを分子レベルで理解するうえで重要な手掛かりになります。
将来的には、加齢や病気、長期入院などによって十分な運動ができない方の筋機能低下を防ぐ研究などにつながる可能性も期待されています。
運動を続けることで変わるのは「体重」だけではない
ダイエットを始めると、どうしても体重計の数字ばかり気になってしまいます。
しかし、運動による変化は体重だけではありません。
以前より歩いても疲れなくなった。
階段を上るのが楽になった。
仕事が終わった後にも体力が残っている。
姿勢を保ちやすくなった。
外出するのが億劫ではなくなった。
こうした変化も立派なトレーニング効果です。
体重が思うように減らない時期があったとしても、体の中では運動に適応するさまざまな変化が起こっています。
数字だけを見るのではなく、「できるようになったこと」に目を向けることも、運動を長く続けるコツです。
広島で運動を始めたい方へ
広島市中区のパーソナルトレーニングスタジオSlen(スレン)では、ダイエット、姿勢改善、体力づくりなど、一人ひとりの体力や目的に合わせたパーソナルトレーニングを行っています。
「運動した方がいいのは分かっているけど、何をすればいいか分からない」
「ジムに通っても続かなかった」
「運動が苦手なので、ハードなトレーニングは不安」
という方も少なくありません。
最初から激しい運動をする必要はありません。
その方の体力や運動経験に合わせて、無理なく続けられることから始めることが大切です。
運動を続けることで変わっていくのは、体重や見た目だけではありません。
疲れにくくなる。
動きやすくなる。
日常生活が楽になる。
こうした変化も、運動を続ける大きなメリットです。
「運動が苦手だけど、そろそろ体を変えたい」
「広島で自分に合ったパーソナルトレーニングを始めたい」
そんな方は、パーソナルトレーニングスタジオSlen(スレン)へお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q. 運動を続けると、なぜ持久力が高まるのですか?
運動を繰り返すことで、筋肉や心肺機能などが運動に適応していくためです。広島大学の2026年の研究では、筋肉で働くCaMKIIγ/δという分子が、ミトコンドリアの働きやエネルギー代謝の適応を支え、持久力トレーニングの効果に関係していることがマウスを用いた研究で示されました。
Q. 運動初心者は何から始めればいいですか?
まずはウォーキングや簡単な自重トレーニングなど、無理なく続けられる運動から始めるのがおすすめです。最初から高い目標を設定するより、現在より少しでも体を動かす時間を増やしていきましょう。
Q. 持久力をつけるには筋トレも必要ですか?
ウォーキングなどの有酸素運動だけでなく、筋力トレーニングを組み合わせることもおすすめです。厚生労働省では成人に筋力トレーニングを週2〜3日行うことを推奨しています。
Q. 何歳から運動を始めても遅くありませんか?
運動は年齢だけで判断するのではなく、現在の体力や健康状態に合わせて行うことが大切です。運動習慣がない方は、まず少ない量から始めて徐々に増やしていきましょう。持病や痛みなどがある場合は、必要に応じて医師などの専門家へ相談してください。
まとめ|持久力づくりで大切なのは「続けること」
2026年9月15日に広島大学が発表した研究では、筋肉で働くCaMKIIγ/δという分子が、持久力トレーニングによる筋肉のエネルギー代謝の適応を支えていることが示されました。
運動を続けることで、体は少しずつ「動ける体」へ適応していきます。
そのために大切なのは、一度だけ頑張ることではありません。
自分の体力に合った運動を、無理なく継続すること。
今日10分歩くことからでも大丈夫です。
小さな積み重ねが、半年後、1年後の「疲れにくく動きやすい体」につながっていきます。
広島でダイエットや姿勢改善、体力づくりのために運動を始めたい方は、自分に合った方法で少しずつ体を動かしていきましょう。
【参考文献・参考情報】
・広島大学「なぜ運動すると持久力が高まるか、筋肉の仕組みを解明―持久力UPは筋肉中でエネルギーを生み保持する分子にあった―」(2026年9月15日)
・Tsukahara R, Kitajima Y, et al. “CaMKIIγ/δ contributes to mitochondrial metabolic adaptation in skeletal muscle during endurance training.” Molecular Metabolism, 2026.
・厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
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執筆者:前迫大昌 ▶︎ プロフィール
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